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浦河「大黒座」へ行こう! 


暑い夏の一日。
昭和のシネディクトオヤジは決意して、
初めて浦河の大黒座さんを訪ねた。
涼しい海辺の町浦河の中心街に「大黒座」はあった。

おう、立派な佇まい。
さっそくデジカメに収めたけれど、
オヤジだからつい、その写真にも昭和の幻影を追い求めてしまう。

しかしそれは、身勝手な勘違いであった。

館内に一歩踏み込むと、
公共のハコモノとは何かが違う、
瀟洒なミニシアターは、「映画」への愛に満ち溢れていた。

子供の頃の町の懐かしい映画館。
学生時代の場末の名画座。
いや違う。いまの大黒座は、
銀座・有楽町界隈のロードショウ劇場をコンパクトにしたような、
その佇まいは、むしろ岩波ホールっていう雰囲気がする。

・・・瞬時にそんな想いが過ると同時に、
ひさしく映画館から足が遠のいていた自分を実感していた。

高い天井。疲れない目線。定員48名の贅沢なゆとりの客席の、
ひとつひとつにはクリーニングされた座布団が置いてある。

そこは、全てが「映画」のためについやされた、
思いやりの空気感が漂う、じつに居心地の良い空間なのであった。




20年前の街路整備に合せて、大黒座はミニシアターとして生まれ変わった。
創業は大正7年というから、
それはそのまま映画百余年の歴史と重なりあって、
大黒座も、まもなく百周年を迎えるという。

おおきく変貌する時代の中で、
そのリニューアルによって、映画の灯火は絶やされずにすんだのだ。
そして映画ファンにとっても至福の空間が残された。

・・・しかし、そうは言っても、
百年の映画館を維持するという事は、並大抵のことではない。
情報化の激しい流れの中で、いわば黒子にてっして、
自らの立ち位置を守る。
それは品格が無くては、とうてい成し得ない事であろう。

いや、それだけでは足りない。
映画への「愛」。そして家族の絆。

さらに
その映画愛に共鳴するファンの拡がりもなくては成り立たない。

だから、浦河という町には、幾世代にも亘って、
この映画館をささえてきた、多くの人々がいるのであろう。


利便性の追求は、気がつけば「時間」をも奪い、
喫茶店でくつろぐひと時も、映画館へ足を運ぶいとまも、
いつしか、暮らしのリズムから消しさっていったが、
そういう勘違いしている情報難民の自分を、
覚醒させてくれるのもまた、「映画」なのであった。

アタリマエの事だが、映画館は、
映画館と上映作品と観客が求め合わなければ機能しない。
しかしいまでは、いちばん困難なのが、
「映画」と向き合って、人と人とが共感する拡がりなのかもしれない。

人々は迷路のような情報過多に飲み込まれて、
リアルを喪失し、表層だけで知っているつもりになって、
スルーしてしまうからだ。

その困難に、あえて地域を越えてチャレンジしよう。
大黒座という「場」と、人々の「想い」をつなげよう。
という「応援の輪」。それが、

『大黒座チャレンジ』

なのだ。
この「チャレンジ」は、昨年、
大黒座のデジタル映写機導入を契機に立ち上がったという。

www.daikokuza-challenge.net

これには、たんなる通りすがりのオヤジでも、
エールを送らないわけにはゆかない。

『大黒座へ行こう!』

「いま頃何云っているの」
という「情報通」の映画通諸氏には、オヤジのこのホームページ。
「十年遅れの中高年映画オタク」
のタイトルに免じて、ご容赦いただこう。




その日、日曜夜の観客は私たちだけの貸切であった。
なんという、贅沢であろう。
それでも、終映と同時に、
家族そろって笑顔で、またサポータークラブの方も駆けつけて、
玄関で出迎え、見送ってくださった。

その感激は、
しばらく遠のいていた「映画館」が、急に近しいものとなる感激だ。
「ほんとうに、ありがとうございます」

いや、お礼を云いたいのは、こちらのほうなのです。

また、大黒座で「映画」と「人」に会おう。

そう誓って、浦河の町を後にした。




ここで「映画館」の名場面の登場する映画を思い出します。
・・・まだまだ、たくさんあるはずですね。



「ラスト・ショー」(1971)
ピーター・ポグダノヴィッチ監督
・・・だれにでも忘れられない映画がある、いつまでも変わらない青春がある。


「エル・スール」(1983)
ビクトル・エリセ監督
少女エストレリャは町の映画館で父の秘密を知るのです。


「アニー」(1981)
ジョン・ヒュ−ストン監督
憧れのラジオシティミュージックホール。アニーは明日を夢見て。愛と勇気。


「スプレンドール」(1989)
エットーレ・スコラ監督
映画と映画館への愛が、男と女と観客を結びつける。


「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989)
ジュゼッペ・トルナトーレ監督
村のパラダイス座へ通いつめる少年トト。


「マジェスティック」(2001)
フランク・ダラボン監督
記憶を喪失した男が、父の映画館を再生させる。


「ボン・ヴォヤージュ/運命の36時間」(2004)
ジャン=ポール・ラブノー監督
パリ陥落、ナチスドイツが侵攻して来ても、人々は映画館で映画を観ていた。


「アーティスト」(2011)
ミッシェル・アザナヴィシウス監督
映画が夢だった頃、人生はちゃんと薔薇色だった。



・・・「カイロの紫のバラ」(1985)
ウディ・アレン監督
「イングロリアス・バスターズ」(2009)
クエンティン・タランティーノ監督

・・・まだまだあるよね。

■北海道から
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