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だまし絵の教会

――美術館や名所旧跡を欲張りに廻って、
人の溢れる、にぎやかなミラノ中心街の雑踏のなかで、
なんだか、すっかり草臥れてしまった。
それで近くの教会に立ち寄って、ひと休みした。

ここはドゥオーモ広場のそばの、
「サンタ・マリア・プレッソ・サン・サティロ」教会。
朝・昼・夕べの祈りの時だけ、門が開いている。
門をくぐっただけで、辺りとは別世界の静寂に包まれる。

礼拝堂に足を踏み入れると、老人がひとり祈りを捧げていた。

ルネッサンス初期のこの瀟洒な礼拝堂は、
1478年以降、あの著名な「ブラマンテ」が建造に携わった、
小さいがキラリと輝く傑作建築なのだ。

――これが、名高い聖堂なのだ。

とイスに座って祭壇を見つめていると、
疲れはみるみる消えて、落ち着いた気分を取り戻せた。

足音を忍ばせて、
建物の内部を見学していると、
奥行きのあるように見えた祭壇の背景は、
じっさいは「だまし絵」で出来ている事が判った。
下の写真はその祭壇を脇から眺めたところです。

――ピエロ・デッラ・フランチェスカのもとで研鑽をつんだブラマンテは、
やがてルネッサンスを代表する建築家としてローマで活躍する。

■世捨て人のイタリア散歩
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