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「時代遅れの酒場」

田舎町のそのBARは、港からの坂道の途中にあった。
軋む階段を登って2階のドアを潜ると、カウンター廻りの広さからして、
以前は、若いバーテンさんとかがいて、
しかしその若者も、きっと都会へいってしまって・・・、
いまでは、ママひとり、水割りとかつくっていた。

棚を見ると、モルトとかいっても、ニッカの「北海道」だけだ。
迷い込んだ、閑古鳥のカウンターで、
昆布とか齧りながら、その「北海道」をグラスにころがしていると、
町では見かけない風体が、気になってか、

――どちらから・・・。

と独り言のように、ママが言った。

――さあ、この辺りでは、見掛けないよね。
――判った。北海道ではないんでしょ。
――なんで。
――コトバがちょっとちがう。
――そうか、よく判るね・・・。


・・・思えばオレも、あの町この町、歩いたものだな。

――ママも、この辺りの方ではないんでしょ。
――なんで。
――コトバがちょっとちがう。
――わかる・・・。

一瞬、合った視線を逸らす横顔が、美しいと思った。


そのまま窓の外に、オホーツクの海を探したが、
窓には、ただ夜の闇が拡がっているばかりだ。


■日々雑感 
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