棚を見ると、モルトとかいっても、ニッカの「北海道」だけだ。 迷い込んだ、閑古鳥のカウンターで、 昆布とか齧りながら、その「北海道」をグラスにころがしていると、 町では見かけない風体が、気になってか、
――どちらから・・・。
と独り言のように、ママが言った。
――さあ、この辺りでは、見掛けないよね。 ――判った。北海道ではないんでしょ。 ――なんで。 ――コトバがちょっとちがう。 ――そうか、よく判るね・・・。
・・・思えばオレも、あの町この町、歩いたものだな。
――ママも、この辺りの方ではないんでしょ。 ――なんで。 ――コトバがちょっとちがう。 ――わかる・・・。
一瞬、合った視線を逸らす横顔が、美しいと思った。
そのまま窓の外に、オホーツクの海を探したが、 窓には、ただ夜の闇が拡がっているばかりだ。
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