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「時代遅れの酒場」

田舎町のそのBARは、港からの坂道の途中にあった。
軋む階段を登って2階のドアを潜ると、カウンター廻りの広さからして、
以前は、若いバーテンさんとかがいて、
しかしその若者も、きっと都会へいってしまって・・・、
いまでは、ママひとり、水割りとかつくっていた。

棚を見ると、モルトとかいっても、ニッカの「北海道」だけだ。
迷い込んだ、閑古鳥のカウンターで、
昆布とか齧りながら、その「北海道」をグラスにころがしていると、
町では見かけない風体が、気になってか、

――どちらから・・・。

と独り言のように、ママが言った。

――さあ、この辺りでは、見掛けないよね。
――判った。北海道ではないんでしょ。
――なんで。
――コトバがちょっとちがう。
――そうか、よく判るね・・・。


・・・思えばオレも、あの町この町、歩いたものだな。

――ママも、この辺りの方ではないんでしょ。
――なんで。
――コトバがちょっとちがう。
――わかる・・・。

一瞬、合った視線を逸らす横顔が、美しいと思った。


そのまま窓の外に、オホーツクの海を探したが、
窓には、ただ夜の闇が拡がっているばかりだ。



   ♪この街には 不似合な
   時代おくれの この酒場に
   今夜も やって来るのは
   ちょっと疲れた 男たち
   風の寒さを しのばせた
   背広姿の 男たち
      
   ♪酔いがまわれば それぞれに
   唄の一つも 飛び出して
   唄を唄えば 血がさわぐ
   せつなさに 酔いどれて
   気がつけば 窓のすきまに
   朝の気配が しのびこむ
      
   ♪ああ どこかに何かありそうな そんな気がして
   俺はこんな所にいつまでも いるんじゃないと

   ♪この街には 住みあきて
   俺の女も どこかへ行った
   あいつ今頃 どこでどうして
   どんな男と いるんだろう
   夢のにがさを 知りもせず
   夢をさがして いるんだろう
      
   ♪ああ どこかに何かありそうな そんな気がして
   俺はこんな所にいつまでも いるんじゃないと
      
   ♪この街には 不似合な
   時代おくれの この酒場に
   今夜も やって来るのは
   違う明日を 待つ男
   今夜も やって来るのは
   昨日を捨てた 男たち  
   
    ―――『時代おくれの酒場』作詞・作曲・歌 加藤登紀子 


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