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■世捨て人の熊野紀行 【3】 朝の熊野速玉大社 |
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熊野川が熊野灘へ流れ込む所の、熊野速玉大社を訪ねた。
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まず境内の八咫烏(ヤタガラス)神社に参詣し、 熊野参詣のシンボルともいえる、梛(ナギ)の巨木を眺め、 宮司さんの朝拝に従うように、 朝の速玉大社の本殿を参拝したのである。
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八咫烏(ヤタガラス)の牛王(ごおう)符を求めたいのだがと伝えると、 ちょうど、はいはい、お待たせいたしました。とお札の授与所の、 白いカーテンが、するすると開いたのである。 朝の境内は、 そういう、一日の始まりの、なんともいえない、清清しい空気に包まれていた。
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――境内の一角には「熊野御幸」の石碑があった。 総勢814人・傳馬185匹を従えた二十数日の旅であったという。 京から和泉・紀伊半島海岸沿いに南下して、 紀伊田辺から中辺路の山みちへ入り、 本宮から熊野川を下り、ここ速玉大社へ到り、 さらに那智・雲取・本宮と経由して、また来た路を戻ってゆく、 それは、いま考えただけでも、とんでもない難行苦行の旅なのである。 しかし、それほどまでして、 熊野詣にひとを駆り立てたものとは、いったい何なのであろうか。 そんな疑問に駆られて、 わたしも、ちゃらちゃらと熊野へやって来たのだ。
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■世捨て人の熊野紀行 | ||
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