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世捨て人の熊野紀行 【10】

 
いまの熊野古道 

それにしても、
2000年ものむかし、海を渡った徐福が捜し求めた、
不老不死の霊薬「天台烏薬」とは何処にあるのか。

また、熊野権現のお使いの八咫烏(ヤタガラス)の御神符は、
何故、熊野牛王(ごおう)といわれるようになったか。

モノの本では読んだことあるが、
町の薬局に「ゴオウ」を見かけると、
やはり其処は素通りする訳には行かなかった。

 ―――恐れ入ります。
      あの「五黄」の解説書のようなもの有りますか。
と若い店員さんに話しかけると、美容部員らしく、
 ―――
はい。はい。せんせーい。いま先生呼びますね。
  

奥から奥様の「先生」がパンフを持ってまいりまして、
棚一面に並んだカプセルの説明をしてくれたのです。

 ―――わあ、たくさん有りますね。
      でもこれ、イクラぐらいするものなのですか。
 
 ―――いやあ、高価なものですから・・・。
    
 ―――貴重なものなのですね。

 ―――いやあ、高価なものですから・・・。

奥様が、そればかり云うものですから、
余計興味を持って、いったい幾ら位なのか知りたくなった。
すると、奥様は、とつぜんつぶやいたのです。

 ―――これ空なんです。

 ―――
ぜんぶ母が飲んだものです。
      亡くなった母が、ずーっと飲んでいたのです。
      おかげで母は100近くまで生きました。
 
 ―――
この箱全部ですか。それはたいへんなものですね。

 ―――そうです。ぜんぶです。毎日ですから。
      以前は景気もよかったから。

 ―――そうですか。でも長生き出来てよかったですね。

 ―――
いまでは、こんな高いもの売れませんもの・・・。

こうして、ゆく先々で、行き当たりばったりに、寄り道ばかりしているものだから、
なかなか、熊野古道へは辿り着けない。


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・・・山伏の法螺貝に似て、竹筒の響きが聞こえる。

語り部さんツアーの一行が王子へ到着したのだ。

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ゆく所々の熊野古道のあちらこちらで、

今では「語り部」さんたちが活躍している。

明るく楽しく親切に、旅人さんにお茶をすすめている、

瀧尻王子のお店のご主人も、実は語り部一号なのであった。


語り部一号さんのお話を聞いていると、

ほんとうに此処へ来てよかったと、旅の疲れもひととき忘れてしまう。

――しかし、熊野といえば歴史的には「比丘尼」だ。


わたしは、おやじの語り部より比丘尼の絵解きがいいのじゃ。

比丘尼はおらんのですか。比丘尼は。


そういう、冗談をいいながら、

帰りのバスを待つ時間つぶしをしていたのだ。

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