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世捨て人の熊野紀行 【20】

  熊野観心十界図

一遍上人も、熊野本宮へ向う中辺路山中で熊野権現さまに出合った。
一遍のすすめる念仏札を、「一念の信心」起こりませぬ。
と権現さまは受け取らなかった。
その山中の、一遍にしてみれば有得ない、
ショッキングな出来事をきっかけに、一遍は真実を悟る・・・。

新宮駅の観光案内所に、よく出来た一枚のチラシがあった。


――この絵(三重県津市/大円寺蔵)は、

熊野比丘尼たちが、戦国時代から江戸時代にかけて、

熊野三山の修繕費用を勧進(浄財集め)するため、

全国に持ち歩いて絵解きに使ったものである。

「熊野絵」とよばれ、「心」の字を中心に、

上方に人生の老いの坂、下方に地獄から極楽まで十ヶ所の世界を描く。


 「あなたの心の持ち方しだいで、どこへ堕ちるかわかりませんヨ」という、

こわい絵だ。

――そう、ちらしには解説されている。

しかし、この熊野比丘尼たちが持ち歩いて、

絵解きに使ったという「十界図」は何処かで見覚えがある。

・・・「心」を取巻く、「仏」の位置には天釘を配し。

命釘のポイントには「菩薩」を配す。

「鳥居」は入賞口で、その下には「地獄」が待ち受けている。

これこそまさに、正村ゲージの昔のパチンコ台のデザインではないか。


そうか、そうであったのか。

パチンコの盤面の意匠は此処から来ていたのか。


熊野を歩いて、改めて実感するものがある。

「生」と「死」。この観念をどう実感するか。

・・・古来より、ひとはその実感を求めて、
「絵解き」に導かれるように熊野を目指したのであろう。

その分かち合おうとする思いが、
時代の呼吸を昇華させて作品を生む。
それが「芸術」だ。

しかし文字よりも、圧倒的に絵だ、彫刻だ。


・・・普通列車を待つホームのベンチで、

まじまじと仔細を眺めながら、

「熊野観心十界図」にすっかり感心していた。


■世捨て人の熊野紀行
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