ミズナラ(Quercus
mongolica var. grosseserrata)
学名=クエルクス・モンゴリカ・サブスピーシーズ・クリスプーラ・メニツキィ。
・・・・・なんのこっちゃ?
通称「ミズナラ」は、「ジャパニーズオーク」とも呼ばれ、
その樽が育んだ原酒は、希少性も相まって、
いまではモルトウイスキー通に注目されています。
伽羅・白檀といった、涼やかでオリエンタルな風土を呼び起こす独特な香りは、
100年の経験を得た、日本のウイスキー造りの成熟と共に、
記憶の彼方から、蘇えるかのようです。
欧州では「森の王」といわれる「ミズナラ」も、
わが国では、明治の頃、「Oak」は、日本の「樫」の木と誤訳されたことに象徴されるように、
杉や檜といった伝統文化の中に根付いて生かされた樹木とは異なり、
無用の長物のように冷遇されてきたのです。
「Oak」は本来「楢」と訳されるべきであったのです。
――縄文のころから、人々が「オーク」の恩恵を受け、
神宿る樹と、畏敬の念を抱かれていた森の「ミズナラ」も、
こうして、近代化の背景で、焼き捨てられたりしてきたのです。
森の中で奇跡のように、ひっそりと佇む「森の王ミズナラ」。
―――いよいよ。
道東チミケップ湖を囲む津別の深い森の中の
千年のミズナラ「巨木」と出会う午後がやって来ました。
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鹿除けのゲートを開閉し、昼なお暗い鬱蒼とした森に入りますと、
もちろん山全体にも、人の気配があるわけでなく、
ここ数日の雨で、クルマの入った痕跡も無いのは、路の具合でわかります。
ただ、どのくらい前でしょうか、
チミケップ湖のホーストレッキングの蹄跡だけが残っていました。
ここは熊のテリトリーですので、
クラクションを鳴らして熊達に合図しながら林道をゆくわけです。
あちこちで、小鹿たちが顔を出します。
慎重に、しかもぬかるみに沈まないように、クルマは停まる事も出来ません。
そうして、ぬかるみの悪路をゆくこと5Kあまり。
■「双葉のミズナラ」は在りました。
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美しい森の中にあらわれた、「双葉のミズナラ」は、
なんと申しましょうか、圧倒的に神々しく、
思わず「南無阿弥陀仏」とか言ってしまいそうな、存在感です。
しかし1200年前といえば「南無阿弥陀仏」より、はるか古いのです。
ただただ、呆然と、立ちつくしてしまう迫力です。
・・・写真では、なかなか巧く撮れません。
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やはり、鹿よけゲートを開閉し、
昼なお暗いぬかるみの悪路をゆくこと5K。
■「最上のミズナラ」は在りました。
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どちらの周囲も、若い木々に取り囲まれて、ポツンと存在しているのは、
辺り一帯が、幾たびの山火事や開拓で焼け野原となった事を物語っています。
そういう火の中、氷の中、風の中の時を潜っての、1200年なのです。
・・・きょうは、ただ、静かにしていたい気持ちです。
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■北海道から |