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■ナキウサギとトマト | |
大雪山(ヌタクカムウシュペ)はアイヌ語で、 カムイミンタラ『神々の遊ぶ庭』と呼ぶ。 夏の晴れた日に、 帰省した娘とキャンプをしながら大雪山へ行った。 朝6時台は、先を急ぐ百名山団体ツアー客などでラッシュアワーの様子なので、 それを見送ると、7時台のロープウエイはがら空きなのだ。 この30分から1時間のちょっとした時差で、 山は本来の静けさを取り戻す。 黒岳まで登れば、あとは天候と体力次第。 ロープウエイの最終便の日暮れまで、 可憐な高山植物が咲き誇る、『神々の遊ぶ庭』を逍遥することができる。 コンニチハ。コンニチハ。 お先にどうぞ。お先にどうぞ。と日長一日、 目的を放棄して、引き返せる範囲で逍遥すれば、 カムイミンタラは、刻一刻と、また別な姿を垣間見せるのだ。 それは夏の日の、束の間だけにゆるされる、 至上の楽園でのひと時だ。 |
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御鉢平をぐるりと囲んで時計回りに、 正面の間宮岳・中岳・北鎮岳・凌雲岳・桂月岳・黒岳・北海岳。 よいお天気だから、とりあえず、北鎮岳辺りへ行ってみるか。 |
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そんな具合で、散歩をすれば、 ハイマツの影で、あれ、鹿かと思う大きさの、 キタキツネが大あくびして昼寝している。 ガレ場の岩陰で、「ピチュ・ピーチュ」と声がする。 あれ、ナキウサギさんでないの。 ・・・こんにちはナキウサギさん。 ・・・登山者さんお先にどうぞ。 ・・・いや行きません。写真撮るのです。 ・・・という具合なのです。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ところが、先日のピョウタンの滝でも見かけた、 「指名手配」のポスターを、カムイミンタラでも見かけた。 「このハチみたらご一報ください!」=セイヨウオオマルハナバチ。 花に寄り添うミツバチよりもひと回り大きい、 尻に白い特徴のあるこのハチは、 トマトの受粉のために欧州から輸入された「外来種」だ。 そこで、帰ってネットを調べると、 ミツバチは、ミツを吸う舌の長さが種類によって異なり、 吸う花の種類も違うと言われるが、 舌が短いセイヨウは開いた花びらから吸わず、 横から刺して吸うため(盗蜜)、体に花粉がつかない。 東大保全生態学研究室によると、 横に穴が開くと、在来のマルハナバチもその穴からミツを吸ってしまうという。 花は受粉できず、共生関係が壊れ、植生まで変える恐れがある。 (asahi.com「恐竜以来の大絶滅時代か・・・」2008・6/10より引用) トマト収穫の省力化の為に導入された「外来種」が、 栽培用のトマトハウスから逃げ出して野生化し、 生態系の連鎖を脅かす。 生態系の多様性は失われ、 恵庭市ではすでに9割のハチがこの外来種となり、 大雪山黒岳9合目でも発見されているという。 そして廻り廻って、氷河期からの生き残りの、 ナキウサギの餌となる植生をも、脅かしているというのである。 |
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「・・・農家のおじさんこのトマトのハチは」「ああ、セイヨウじゃないよ。昔トマト」 「今のとどう違うの」「酸味があって、皮が薄い」「・・・なるほどね」 『神々の遊ぶ庭』カムイミンタラで、 細々と太古から生き残るナキウサギの世界にも、 効率化という名の、人為的な、人間のエゴによる、 グローバリゼーションの負の側面が、ひたひたと打ち寄せる・・・。 |
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■北海道から | |
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