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■積丹半島にて

海に開けた道沿いの、海と山の隙間に、
僅かに車の止まれる場所を見つけて停車をすると、
老人が話しかけてきた。

――どうしたね。
――ちょっと、小休止です。
――ああ、いいよ。

――ああ、そうか、ここはおじさんの「土地」なんだ。
――隣は「有料」だけんど、ここは「無料」だ。
――なるほど、空き地に「有料」って書いてある。そうか、この浜はキャンプ場なんだ。
――そうだ。キャンプかね。
――いや、通りがかりで・・・。
――何処行くの。
――何処?ああ、これから競馬に行くんだ。
――何があるね。
――札幌記念。クルマの中で、みんな「競馬新聞」読んでいるでしょ。
――ああ、そうか。浜に突き出たこの建物は、オラのだ。

――そうでしたか・・・。土地の無い道路脇の、
   浜に突き出た物置の屋根が車庫になっている。でも此処で何するの。
――ここで、海見るんだ。
――海なら何処でも見れるじゃないの。
――いや、此処でだ。オラの建物だから。
――そうか。海を見る場所が決まっているんだね。
――そうだ、オッカアと口論になると、此処で海見るんだ。
――たまには、そういうこともあるでしょう。
――いや、しょっちゅうだ。

――・・・そうですか。けっこう恐いものがありますね。
――そうだ。恐いもんだ。
――前が海では、逃げ場もないし・・・。
   おじさんも気をつけた方がいいね。
――そうだ・・・。
――でも、海を見れば、諦めもつくね。海は広いから・・・。
――そうだ・・・。
――そうか、「海」はいつもおじさんの味方なんだね。
――そうだ・・・。

――じゃあ、競馬へ行くから。
――じゃあ、気をつけて。
――おじさんも、気をつけたほうがいい。
   
――お邪魔しました。
――・・・・。



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